

東京にうまれ東京に育ち、幼稚園から大学までミッション系の学校へ通った私は、日本に「歴史」があることは知っていても「神話」があることを知りませんでした。「古事記」はテストにでてくる単語でしかない。憧れのギリシャ神話や北欧神話のような壮大なファンタジーはけっして日本ではありえない。つまり、日本は文化的に欠けている。そう信じ込んでいました。
大学を卒業し歌を歌うようになった頃、自分の表現を探し求める中で偶然「古事記」に出会い、日本にこんなに心躍る物語が存在し、そしてその「登場人物」が今でも神社に息づいているのかと衝撃を受けました。小説の中だけではなく、実際に自分の身近にそういう存在が(目には見えなくとも)たしかにいるのだということは、なぜだか私を勇気づけました。人間がもつ果てしない孤独が、ほんの少し埋められたような、そんな心地になりました。
「神話」は宗教ではなく、国の物語であり、つきつめればこの「地球」の「文化」です。
それは、海外公演をすればするほど、確信をもって私の胸にせまってきます。日本神話は、世界的にはまだあまり知られていない「物語」です。
・エコツミ・は、日本で、そして世界中で、日本神話を表現し、伝えてゆきます。
和風歌劇・コンテンポラリーオペラ
新訳古事記シリーズ
■造化三神
「造化三神ヒトリ神」
2016.11

私の両手はあまっている
未だ誰にもつながっていない
古事記の最初に登場する三柱の神々。
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神産巣日神(かみむすひのかみ)の物語。
イザナギ・イザナミのような対の神ではなく独神(ひとりがみ)として生まれ落ちた孤独な存在の物語。
■アマテラス
「八咫鏡」「神の理」
「そして世界は暗くなった」
2010.3 / 2011.12 / 2015.12 /2016.2 /2016.6

信じたって裏切られる
私は太陽のはずなのに完璧になれない
父イザナギの跡を継ぎ高天原を治める太陽神アマテラス。そこに海の国を治めていた弟スサノオがやってきた。国は混乱し、死者がでる。
この世界から消えてしまいたい・・・。アマテラスは岩戸に閉じこもった。
■イザナギ・イザナミ
「IZANAMI」
「イザナギ・イザナミ」
2018.3 / 2018.11

呪いをあげましょう
最後の鎖 最後の贈り物
この世界を作った二神、男神イザナギ・女神イザナミ。しかし、火の神カグツチを産むときに火傷を負い、イザナミは死んでしまう。
イザナミを生き返らせたいと黄泉の国まで来たイザナギだが、すでにイザナミは変わり果てた姿になっていた・・・。
■スサノオ
「草薙」 〜カタワレの物語〜
2010.1

唄を歌うよ きこえるように
今日も綺麗な満月だ
聞こえたら そう 戻っておいで
アマテラスが治める高天原を追放され、地上に降り立ったスサノオ。一人前になるためにはカタワレを殺し、生贄となった女を救わなくてはならない。そんなとき出会ったのは、自身とどこか似ている女。
ヤマタノオロチ伝説に隠された己の半身の物語。
■サグメ
2010.7 / 2013.5 / 2017.6
「天の声を探す女」
「神に背いた巫女」

天の声を探す巫女 想いをよせた月の神
守る気持ちは裏腹に
人を傷つけ 剣となる
ツクヨミに恋をした巫女サグメは、彼がいなくなった高天原にはいられないと、地上へ降りる決意をした。出会ったのはどことなくツクヨミに似ているワカヒコ。しかし、天の声によりワカヒコがもうすぐ死ぬことを知ってしまう・・・。
のちに、あまのじゃくと呼ばれた女の物語。
■ツクヨミ
2010.5 /2011.8 / 2013.1
「八尺瓊勾玉」 〜知られざる月読語り〜
「ツクヨミとサグメ」
「とこじくの世界」

すべての狭間 昼と夜のまんなか
夜と朝のすきま 一瞬の逢瀬
勾玉はそんな場所でうまれた
夜の国へ行くことになったアマテラスの弟、ツクヨミ。遠い国、2度と戻ることはない故郷。恋した相手も今は遠い。しかし彼女が眠りつく間だけ、彼は彼女の心に寄り添うことができた。夜毎にその痛みを受け取るために。叶わない想いはいつも心を惑わせる。
■アメノウズメ
「アメノウズメ」
2014.5 / 2014.6

出逢うべき人 迷わない人
何を捨てても惜しくない人
そうして 海の泡のように
どこかへ消えてしまった人
岩戸に閉じこもったアマテラスを外に出すために、大役を担い、激しく舞ったウズメ。その後、地上の神サルタヒコと結ばれる。道を示す神であるサルタヒコだが、しかし突然海で亡くなってしまう。太古の昔、歌は祈りであった。
■オオクニヌシ
「ぼくの名前は誰もしらない」
2010.9

地上を治めた王
幾度も名を変え 生き返った英雄
しかし彼はただ誰かに
愛されたいだけだった
オオナムジ、ウツシ、シコオ、多くの名前をもつ大国主。周囲に翻弄され、自分が誰かわからなくなってゆく。のちにこの世界を治める大王となる彼の、その本当の名前をめぐる物語。
■ミイ
「森の子」
2013.9

結ばれた想い 絶たれた絆
本当に捨てたものは何?
母さん ぼくはどうして生まれたの?
オオクニヌシの子、ミイ。母ヤガミは正妻スセリにおそれをなし、彼を木の上に捨てた。のちに、木の守護神、水の守護神、森の守護神となってこの世界を見守ることになる小さな神様、ミイの物語。
■コノハナサクヤ
「泣いた黒鬼」
「永遠に花びら」
2010.12 / 2014.10

私とあなた ふたりでひとつ
光と影 愛と憎しみ 陰と陽
この世界から消えてほしい
一番大切な存在
桜の語源と言われる美しい神、サクヤ。天上界から降りてきたアマテラスの末裔、ニニギと恋におちた彼女だが、サクヤには醜い姉イワナガがいた。たった一夜の契りで懐妊したサクヤに、姉がしたこととは・・・。
■ヒルコ
「胎児の記憶」
2010.12

ぼくは 生まれなかった
イザナギ・イザナミが最初に産んだ子は形を成していなかった。彼らはヒルコと名付け、いつか成長して会えることを願い、祈りを込めて海に流した。長い長い時を経てヒルコは世界をめぐり、そうしてまたここに戻ってくる。
番外編・新訳御伽草子
「鬼 〜蝦夷〜」
2011.05

東北地方に息づく艶かしい鬼の罠。
男はなぜ鬼と呼ばれたのか
女はなぜ鬼になるのか。
「人の掟」
2011.12

遠い場所、深い森、一本の木。
山の麓の小さい里で 飢えのために遊郭に売られる幼子がいた。
生きてゆく地獄と朽ちてゆく死、
彼女は何を選ぶのか・・・。